熱処理Vol.7〈有効硬化層・全硬化層とは〉
う~ん…
どうしたの?
図面に書いてある、硬化層深さの意味が分からなくて…
浸炭処理はどうやって硬くしたか思い出してみて!
表面から炭素を侵入させて硬くしたよね!
よく覚えてたね!
炭素を侵入させる部分がどれくらい必要なのか?
というのが硬化層深さなんだ。
ちなみに図面の指示は、
【有効硬化層】?【全硬化層】?
【有効硬化層】??【全硬化層】???
じゃあ今回は、
浸炭処理の硬化層深さについて勉強しようか!
お願いします!
深さには有効硬化層深さと全硬化層深さの2種類があるんだ。
JISでは、
有効硬化層深さは焼入れのまま、
又は200℃を超えない温度で焼戻しした表面から、
限界硬さである550HVの位置までの距離。
全硬化層深さは硬さが生地と同じになる位置までの距離。
と定義されているんだよ。
全然わからないや…
文章だけだとわかりにくいよね。
グラフにしてみるとこうなるんだ。
浸炭処理は表面に近いほうが硬く
内部に近づくにつれて硬度が下がっていくよね。
そこで、550HVという硬度がでる
表面からの距離(深さ)を有効硬化層深さ、
表面から炭素が侵入しているかしていないかの
境目までの距離(深さ)を全硬化層深さ、
と規定しているんだ。
なんだか難しいなあ…
そうだね、最初はイメージしにくいよね!
有効硬化層深さを決めるイメージは
熱処理が終わって実際に使用するまでに
どのくらい表面を削る加工をするのか
イメージしたほうがわかりやすいかもね。
そっか。熱処理の後も次の加工があるもんね!
「浸炭した後の研磨加工で浸炭した部分を
すべて削ってしまって使えなくなった。」
なんて話もあるから、とても注意が必要なんだよ。
全硬化層深さはどうなるの?
全硬化層深さは浸炭した時に炭素が
どこまで侵入しているかっていう深さなんだ。
明確に境界があるわけではなくて、
硬度の規定も特別ないんだよ。
じゃあどうやって確認するの?
基本的にお客様とのやり取りで決まるけど、
理化工業では、
「表面」から「中心の硬さ+50HVの部分」の距離を
全硬化層深さとして測定することが多いかな。
他にも、中心の硬さ+30HVだったり、
金属組織を見て境目を探したり、
方法はいろいろあるんだ。
なんだか曖昧に感じるね。
そうだよね。
一般的には実用面を考えて
有効硬化層深さで記載された図面が多いよ。
図面を見るときは硬化層深さだけじゃなくて、
研磨代だったり変形しそうな箇所や歪み、
色々なことを注意する必要があるんだ!
熱処理って難しいんだね。
熱処理って奥深いんだよ。
-
前の記事
熱処理Vol.6〈質量効果とは〉 2023.05.01
-
次の記事
熱処理Vol.8〈硬度の測り方について〉 2023.09.01