熱処理Vol.9〈硬度の換算とは〉

熱処理Vol.9〈硬度の換算とは〉

うーん…

どうしたの?

お客様に硬度について聞かれたんだけど分からなくて…

どんな内容だった?

図面の硬度はHVで書いてあって、

お客様はロックウェル硬度計しか持ってないから

HRCでどのくらいになるか教えてほしいって言われたんだけど…

そんな時は換算表を使えばいいよ!

換算表?

ネットで検索しても出てくるし、理化工業にも換算表はあるからね。

これで数値を照らし合わせたらわかるんだね!

早速調べてお客様に連絡してみる!

ちなみに今回はどんな規格だった?

硬度620~720HV

材質はSCM415で浸炭熱処理

有効硬化層深さで0.1~0.3㎜だって

浅いなあ…

浅い?どういうこと?

620~720HVは換算値で言えば

56.3~61.0HRCになるけど、

実際にロックウェル硬度計で測定しても

多分その硬度は出ないかなあ。

どうして?

換算値って、本当にあくまでも換算値

全く同じってわけじゃないんだ。

換算値でも違うの?

ビッカース(HV)ってどうやって硬度を求めたか覚えてる?

圧子に荷重をかけて、

顕微鏡で見た圧痕の表面積から求めていたよね。

そう!そこが問題なんだ。

ビッカース(HV)は顕微鏡で見るくらい小さな圧痕だから、

深くは刺さらないんだ。

じゃあロックウェル(HRC)はどうやって求めてた?

圧痕の深さから求めてた!

よく覚えてたね!

ロックウェル(HRC)は圧痕がそれなりに大きいし、

荷重も大きいから深くまで刺さるんだ。

荷重ってそんなに違うの?

理化工業ではビッカース(HV)表面硬度で1㎏

内部で300ℊなんだ。

ロックウェル(HRC)になると

150㎏の荷重をかけて測定しているんだよ。

確かに一点に150㎏もかかったら深く刺さるよね。

そもそもなんで深く刺さるとダメなの?

硬化層を突き抜けてしまうんだ。

例えば今回の図面だと浸炭層が浅いから、

最表面だけ硬さが欲しいということなんだけど、

仮にロックウェル(HRC)で測ると

浸炭層を突き抜けて内部まで測ることになるから

最表面の硬度が分からないんだ。

だからビッカース(HV)で測るんだね。

現実的にロックウェル(HR)だと小さいものが測れない。

ていう理由もあるしね。

他にもショア(HS)といって、

小さなハンマーを使って反発力から求める測り方もあるけど、

表面硬度がビッカース(HV)と同じでも

内部の硬さが違えば反発力が変わるから

もちろん違ってきちゃうし。

色々な理由があるんだね。難しいなあ。

難しいよね。

製品に必要な条件を満たす

鋼材・処理の選定ももちろん大事だけど、

検査方法も大切な要因の一つなんだ。

熱処理って難しいんだね。

熱処理って奥深いんだよ。