金属熱処理に関する用語「は行(はひふへほ)」
- パージ
- 炉内にある気体を追い出す操作。
- バーンアウト
- ガス浸炭炉および浸炭ガスの変成炉は操業を続けるうちに炉内に遊離炭素が堆積しやすい。この堆積した炭素は炉内の雰囲気条件や変成能力を乱し、さらに炉内で使用される冶具の寿命を短縮する作用をするので、必要に応じ、または定期的に炉内に空気を送り込んで燃焼、除去することが必要である。このように遊離、堆積した炉内炭素に空気を送り込んで燃焼させる操作をバーンアウトという。
- 肌荒れ
- 熱処理によって生じた加工品表面の凹凸、酸化、脱炭、浸炭などの総称。肌荒れを防ぐには炉内雰囲気を調整するか、真空炉を使用するのがよい。
- 肌焼き
- 肌焼きとは鋼の表面部を硬化するため、浸炭した後、適当な熱処理を施す操作。
- パック熱処理
- 熱処理する品物を非常に薄いステンレス鋼箔(ホイル)の封筒に入れて熱処理する方法。ホイル熱処理ともいう。
- バッチ炉
- 加工材料の加熱を1サイクル毎に行う非連続形式の加熱炉をいう。
- 発熱型ガス
- 熱処理用炉気ガスの一種で、燃料ガスに一定割合の空気を混合して炉中に送って燃焼して作る際、空気の添加量が多い場合には燃焼熱で炉を高温(1000~1100℃)に保つことができる。このような方法で作ったガスのこと。
- 破面試験
- 鋼材にわずかな切込みをつけ、これを打撃によって折断し、その破面によって結晶粒の粗密、不純物の偏析、脱炭の有無、熱処理の適否などを判断する方法。
- 破面組織試験
- 金属の破面を肉眼でなしに高倍率の顕微鏡で試験する方法。
- 表面硬化処理
- 鉄鋼の表面層を硬化するために行う浸炭焼入れ、窒化、高周波焼入れ、炎焼入れなどの操作。
- 表面硬化法
- 鉄鋼の表面を硬化する熱処理方法で、物理的表面硬化法と化学的表面硬化法の2つに大別される。
物理的表面硬化法は単に鉄鋼の表面のみを焼入れ硬化する方法で、炎焼入れと高周波焼入れが代表的なものである。
化学的表面硬化法は鉄鋼の表面の化学組成を変え、これを焼入れ硬化する方法である。その代表的なものには、浸炭、窒化、青化法などがある。
- ピーニング
- 表面を加工硬化させながらある程度の仕上度を保持させる一種の加工法であり、球状の微粒物を被仕上げ物に噴射して、切欠き効果の生じないように加工して強さを増大させるものである。これを行うと引張強さおよび疲労限ははるかに上昇するもので、ばねやシャフト等に施して効果がある。ショットピーニングともいう。
- PVD
- 物理的蒸着法といわれる方法で、真空容器中でTiNやCrNなどの硬いコーティングを作る。耐摩耗性の大きい被膜を作るため、工具の切削寿命は著しく増大する。CVDよりも処理温度が低いので、工具はあらかじめ焼入れ、焼戻しておいてからPVDを行うだけでよい。処理温度が工具の焼戻し温度より低いので、SKD11やSKHもしくは超硬合金に適用できる。
- ピクラール
- 鉄鋼の顕微鏡組織検出用の腐食液で、ピクリン酸3~5%のアルコール溶液のこと。主として焼なまし鋼や焼ならし鋼の腐食液に使用される。
- ひずみ硬化
- 再結晶温度以下で塑性変形させることによって硬さと強さを増大する現象。
- ひずみ時効
- 常温加工を施された金属がその後の時効によって硬化する現象。
- ひずみ取り焼なまし
- 残留応力を除去するために行う焼なまし。
- ビッカース硬さ
- 頂角136℃のダイヤモンドの四角錐を試験片の表面に押圧し、できたくぼみの面積で荷重を除いた商をビッカース硬さ(HV)という。
- HIP
- 高温等圧法といわれる方法で、高温で等方圧(水圧)をかけて粉末体を焼結するプロセス。P/M(粉末冶金)ハイスや超硬合金の製法に活用されている。
- 不完全焼入れ
- 鋼材の心部までマルテンサイト焼入れ(完全焼入れ)にならず、フェライト、ベイナイ
ト、パーライトなどの組織が混合するような焼入れを不完全焼入れという。
- 不均一組織
- 多層組織のことで、2相以上の組織が混在するもので、一般の実用合金はこの組織を有する。
- 不均一焼入れ
- 部品の各部不均一の焼入れのこと。つまり硬度、深度ともに不ぞろいの焼入れ。
- 複合熱処理
- 従来の単独熱処理を2~3種類組み合わせて行う熱処理のこと。単独の熱処理では単味であるが、ブレンドすることによってより効果的な持ち味を発揮するようになる。
ブレンドは一般熱処理と表面熱処理、表面熱処理同士、まためっきやコーティングと熱処理のブレンドなどが挙げられる。
- 復炭
- 熱処理その他の熱間加工によって表面脱炭したものをガス浸炭によって表面の炭素量を生地のC%に復帰させる熱処理のこと。従来の浸炭は低炭素鋼の表面C%を0.9~1.2%にする方法で、表面と内部のC%の差が大きいが、復炭においては表面と内部の差が0%である。
- 普通熱処理
- 焼なまし、焼ならし、焼入れ、焼戻しなどの熱処理の総称。これに対して浸炭、窒化、高周波焼入れなどを主として表面硬化を狙う熱処理を表面熱処理という。
- フラッシュ焼入れ
- 10%の食塩水焼入れのこと。普通の水焼入れよりも冷却能が約2倍大きく、かつ焼むらを生ずることがないので、硬焼入れに賞用されている。
- ブリネル硬さ
- 試料の試験面に球分の凹みを作るのに要した荷重(Kg)をその永久凹みの表面積(mm2)で除した商のこと。
- フレームカーテン
- 雰囲気炉において、加工材料の装入または取り出しの際、炉内への空気の進入による炉気の乱れや爆発を防止するために、挿入口または取り出し口の覆いとして燃焼させる炎のこと。
- プレス・テンパー
- テンパー(焼戻し)する時、プレスして行う方法で、曲がり直しや整形に非常に有効な方法。
- プレス焼入れ
- プレスした状態で焼く焼入れ。焼きいれ変形を極度に嫌う機械部品に応用され、ダイクエンチともいう。
- 雰囲気ガス
- 雰囲気を不活性、還元性、酸化性、脱炭性、浸炭性、窒化性などの目的によって調整するため炉内に送入するガスのこと。
- 雰囲気調節熱処理
- 炉内の雰囲気ガスを目的に応じてそれぞれ調整して行う熱処理。雰囲気ガスには酸化性、還元性、不活性、浸炭性、窒化性などの種類がある。
- 雰囲気炉
- 加工材料を加熱する雰囲気の酸化性または還元性、脱炭性あるいは浸炭性など、加工の目的に適するように調整できる加熱炉。
- 噴水焼入れ
- 噴水冷却によって焼入れを行う操作。
- 噴霧焼入れ
- 噴霧によって焼入れする操作。焼入れ変形が少ないので、特殊焼入れに応用されている。
- 平衡状態図
- 平衡状態において、すべての温度範囲にわたり、あらゆる組成について、合金の固体ならびに液体間の相対的な量的関係を表したグラフ。縦軸に温度、横軸に合金の組成割合をとって図示する。
- 変形
- 熱処理による形状の狂いのこと。曲がり、反り、ねじれなどの形の変化がこれに該当する。
- 変寸
- 熱処理による寸法狂いのこと。寸法の伸び、縮みがこれに該当する。
- 変成ガス
- 変成によってガスの成分を実用に適するように変えたガス。変成ガスには発熱型と吸熱型の2種類がある。
- 偏析
- 合金元素や不純物の不均一分布。
- 変態
- 温度を上昇示降させる場合にある結晶構造から他の結晶構造へ変化する現象。
- 変態ひずみ
- 変態によって生ずる変形。
- ホットクエンチ
- 焼入れの一種で、室温よりもかなり高い温度の焼入れ液による焼入れをいう。焼割れや焼ひずみの防止に有効である。焼入れ液には油を使うことが多い。
- ポット焼入れ
- 浸炭後、そのまま直に焼入れする方法。浸炭用箱から品物を取り出してそのまま焼き入れすることから、このようにいいならされている。
- ホモ処理
- 水蒸気処理を参照。
- 炎焼入れ
- 炎で直接加熱して行う焼入れ。主に鉄鋼の任意の表面を焼入れする場合に用いる。